現在存在する多くの教育問題の原因として挙げられる大学入試の改革

文部科学省(以下、文科省)に設置された中央審議議会が平成26年の12月に答申を提出し、大学入試改革の大きな方向性が見えてきた。変更点の一つとして注目を受けているのは大学入試センター試験が廃止され、新しく「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」が導入される点である。さらには、今までは「読む」「聞く」の2技能を中心に評価した英語試験は、「書く」「話す」を加え、4技能全てを評価する方針が発表された。2021年には新しい試験が行われる予定となっており、2015年の中学1年生がはじめて挑む形となる。

今までの大学入試では知識の暗記や再生を重視した形式で行われており、知識を活用した思考力、判断力、または受験生の主体性や多様性を図ることが十分に行われていなかったという問題意識が今回の改革の根底にあることが推測される。

新しく導入される試験では「思考力・判断力・表現力」が評価の中心となっており、「思考力・判断力・表現力」は「知識・技能を活用して、自ら課題を発見し、その解決に向けて探求し成果等を表現するために必要な能力」と定義されている。

複数の選択肢から1つの正解を選ぶ形の問題を代表とした正しい解答を探す今までの知識の暗記や再生を軸とした入試ではなく、記述式の問題や正解が一つに定まらない可能性がある問題等が含まれた「思考力・判断力・表現力」を評価する入試へと変わっていく。

改革の背景:今後の社会で必要となる能力

知識を有していることは重要ではあるが、近年のスマートフォンやインターネットに繋がるデバイスの情報通信技術の発達により、瞬時にあらゆる情報を入手することが可能となった現代では知識のみで差をつけることは難しい。入手可能な知識・情報を活用した上でどのような判断や思考ができるのかが問われる時代となっている。

文科省も既に上記の点に着目しており、ますます進化する時代の中を生きていく子どもたち一人ひとりにとって必要な能力として下記の3点を提示しており、それらを「学力の3要素」と呼んでいる。

(1)十分な知識・技能

(2)それらを基盤にして答えが一つに定まらない問題に自ら解を見出していく思考力・判断力・表現力等の能力

(3)これらの基になる主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度

これらの要素は今回の大学入試改革に限らず現在の中学生等が受けている教育課程の基準である学習指導要領にも考えが反映されており、今後も教育改革において重要なポイントとなっている。教育改革において重要視されているこれらのポイントの背景には目まぐるしく変化する時代でも活躍できる人材を育てなければいけないという、国の問題意識および経済産業界からの要望が反映されている。 (関連記事:「時代が求めている能力は変わってきている」)

形を変える英語試験:2技能から「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能が試される形へ

大学入試改革において大きく変化を遂げようとしているもう一つの点は英語試験の在り方である。現行の英語試験は「読む」「聞く」の2技能に集中しており、そのため英語の勉強方法もそれらに沿って行われることが多かった。実際に英語をアウトプットする「書く」「話す」の機会が限られてしまっている日本の英語教育では実用的な英語が身に付けることが難しい要因の一つとして挙げられている。

今回の大学入試改革では英語試験において今後は2技能ではなく、「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能を評価する方針を発表しており、またTOEFL等外部の外国語資格検定試験が活用できる制度へ変えることを検討している。

既にTOEFL等外部の外国語資格検定試験を大学入試の一部として活用している大学も増えており、従来の帰国子女枠、推薦枠以外にも一般入試にも導入されている動きが確認できる。(関連記事:TOEFLが発表したTOEFL iBT テストスコア利用実態調査報告書)

受験生から見ると今までの試験形式では、スピーキングやライティング等を勉強してコミュニケーション能力を育んだとことろで大学入試で求められないため、受験で必要とされる「読み」「聞く」に集中せざるを得ない状況であった。そのため、大学で留学の機会や仕事で英語を活用する状況になった際に受験勉強で培った英語とは別にスピーキングやライティングを別途習得する必要が生じてしまい、実用的な英語習得のハードルがさらに高まってしまっていた。

4技能の入試を導入することで大学受験で培った英語力がその後の留学機会や社会に出た際に英語が必要とされる場面でもより活かせる道が示され、より実用的な英語を早い段階から身につけることで優位性を持つことが可能となる。

影響されるのは2015年の中学1年生世代だけではない

現行の大学入試センター試験の廃止や英語での4技能への移行等を含めた今回の大学入試改革の方向性は、今後も国内外で大きく進化をし続ける社会の中でも一人ひとりがより活躍できるための能力を重視しており、今までの知識の保有に偏っていた試験から大きく形を変えることになる。

「思考力・判断力・表現力」で求められるものとして「答えが一つに定まらない問題に自ら解を見出していく」という観点が重視されることが予測されている。従来の決まった答えを探す作業ではなく、課題をより深く理解し、自らの考えを表現し、その上で解決策等を表す必要が出てくる。

提示された課題に対してその課題の前提や背景について深く考えること。「そもそもの問題の根底はどこに存在するのか?それはどのような視点から捉えることができ、またどのような形で人々の生活に影響を与えているのか?」等、より深くまた正解が一つとは限らないという思考をもって挑む必要がある。またその課題に対して自分はどのように感じているのかを表現する力も問われることが想定されている。これらの二つを行い、その上で課題に対して解決策が求められる問題形式も出てくることが考えられる。

これらの能力は試験のためだけではなく、日常的にも活用することが現在そして今後の社会で活躍するために必要な能力なのではないだろうか。日頃から触れているニュースや出来事に対して疑問をもって接すること、自分ならどのように思うか・行動するかを考えてみること、そして自分の考えや解決策を周りの人に伝えて、場合には行動に移してみることが社会の一員として大切であり、既に求められているという認識が広まっていることが今回の大学入試改革の背景にあるのかも知れない。

大学入試という点では2015年の中学1年生以降の方々に直接影響を与えることが予定されているが、進化し続ける社会で活躍の場を求めるという意味では重要視されている「思考力・判断力・表現力」は中学1年生以上の方にもとても重要な能力であることは変わらない。

*“Exam” is copyright (c) 2006 Alberto G. and made available under a Attribution 2.0 Generic license

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